HOME > スタジオTOP > スタジオお役立ち情報 > Adobe premiere → Pro Tools検証「リミックス編」

GUIDE スタジオお役立ち情報


1エッセンシャルサウンド|リミックスとは

リミックスは2022年にAdobe Premiereに実装された機能で、BGMを指定した長さに自動調整してくれる大変便利な機能です。
最近では、音楽編集作業を、より効率的かつクオリティ高く行うための重要なツールとなっており、Premiereをお使いの方にとっては是非とも活用したい機能になっています。

2リミックス機能を使うとMA現場ではこんな怖いことに・・・

Premiereにリミックス機能が実装されると、時を同じくして、弊社MAスタジオでは、奇妙な現象が多発するようになりました。
持ち込まれるOMF・AAFデータを展開してみると、BGMのスタート位置が明らかにおかしいクリップ、突然途中で消えてしまっているクリップ、ありえない位置に突然現れるクリップ・・・以前では考えられなかった現象の数々・・・。
データをお持ち込みいただいた方に詳しく伺っていくと、一つの共通点にたどり着きました。

「それ、リミックス機能・・・使われましたね・・・」


3「Premiere → Pro Tools検証」リミックス編

度々起こる奇妙な現象に怖がってばかりもいられません。早速検証スタートです!!

3-1:リミックス機能でBGMの秒数違いを作成

ここでは1曲のBGMから秒数違いバージョン(20秒/30秒/40秒)を作成し、傾向を探りました。

1曲のBGMから秒数違いバージョン(20秒/30秒/40秒)を作成

上記、無事リミックス機能で作成した秒数違いのBGMが出来上がりました。

リミックス機能での音楽編集の傾向としては、長さの違いはありますがイントロとエンディングについては必ず使われるようです。

このPremiereデータをAAFで書き出します。(OMFについては後でご案内します)

上段が先ほどのPremiereデータ、下段がAAFを展開したPro Toolsデータです。

上段がPremiereデータ、下段がAAFを展開したPro Toolsデータ

20秒のBGMでは差が見えず問題なく引き継がれているように見えます。
ですが、波形途中で音が1フレームなくなり、おそらくあったであろうクロスフェード情報が消えています。
30秒のBGMはお尻が切れてなくなっています。
見えにくいですが波形途中で音が1フレームなくなっています。
40秒のBGMではBGMの後ろ半分がなくなってしまっています。
こんな状態ですので再生音も途切れて、まともには使えません。

同じBGMから生成された秒数違いの3つのクリップ。規則性なくランダムに種々のことが起こっています。
リミックス機能を使ったPremiereデータをAAFで書き出すと、正しく引き継がれていない可能性があることが分かります。


3-2:詳しく波形を見る

リミックス機能で書き出したデータがどのようになっているか、MAで使用するPro Toolsデータで詳しく見ていきます。

Pro Toolsデータ

まず、編集点を見比べてみます。
音楽編集をする際には編集点をなじませるためにクロスフェードがよく使われます。

Pro Toolsデータ1Pro Toolsデータ2

にはクロスフェードがありません。
にはクロスフェード情報が引き継がれています。
このデータ上では以外にもクロスフェードがないところはたくさんあります。
音を聞いてみると、クロスフェードがないので音のつながりが滑らかでなく、波形の切れ目にノイズが発生しています。

Pro Toolsデータ3Pro Toolsデータ4

は音がいなくなっています。もちろん再生時にも「ブツッ」と音が飛んだ音がします。
このような症状があるとMAでこのまま使用することはできません。

ちなみに・・・
AAF書き出しの際に予備フレームが設定されていれば、設定された余白の長さまではPro Toolsでデータを引き出し、編集点を調整したり、クロスフェードをかけなおしたりすることもできるので修復は不可能ではありません。

しかし、データ欠損範囲が大きいものについては、BGMの再編集が必要となり、その分MA費用もかさむことになります。

4結論! こうすればMAでも大丈夫!!

先ほど挙げた例では、Premiereでリミックス機能を使ってAAFを書き出しても、正確にデータを引き継げる可能性が低いことがわかりました。
(弊社でこれまでお預かりしているリミックス機能を使用したOMF/AAFデータでは、そのままMAで使用できたという例は今だありません)

しかし、先にも申し上げましたが、リミックス機能はPremiereをお使いの方にとっては是非とも活用したい画期的機能の一つです。MAに引き継げるデータさえ作れればリミックス機能の効果を大いに活用できるわけですから、その方法を調べない手はないのです!

ということで、弊社ではさらに実験を重ねました。
色々な機能を試した結果、解決策を一つご提案するに至りました。

それは

クリップをレンダリングして置き換え 処理を行う
ということです。


クリップをレンダリングするということはクリップを「生成」するということ。
すなわち演算途中の状態から固有クリップに書き換えるということです。

固有クリップとして生成された音声はAAF書き出しを介してそのままPro Toolsへ引き継がれます。
これによって正確なクリップ情報がPro Toolsへも引き継がれ、Premiereで編集されたBGMをそのまま再現することができるのです。


クリップをレンダリングして置き換え

対象クリップを選択右クリッククリップをレンダリングして置き換え
もしくは
Premiereメニューの クリップクリップをレンダリングして置き換え
で行うことができます。めちゃめちゃ簡単です。


もし、編集途中の過程を残しておきたい方は

対象クリップを別トラックへ複製してから クリップをレンダリングして置き換え
を行うといいかもしれません。

これを行った後にAAFの書き出しを行えば、MA時、音が切れたBGMを前に「え、なんで音が途中でいなくなっちゃってるの??」と頭を抱えずに済みます。


ちなみにこれが出来上がりデータ比較です。

リミックス作成
リミックス作成
レンダリングして置き換え
レンダリングして置き換え
AAFを展開したPro Toolsデータ
AAFを展開したPro Toolsデータ

5OMFではなくAAFで書き出して!

ここまでのお話しでは、常に「AAF書き出し」とご案内してきました。
その理由についてご案内します。

OMFで書き出した場合、リミックス機能を使用し、レンダリングしないまま書き出した場合には、データ自体が壊れてしまう可能性があります。
データの生成はできるので一見してエラーはわからないのですが、展開すると、エラーコードが表示され展開できません。
もし、展開できたとしてもBGMの場所ずれを起こしています。

現在、AAFはOMFに比べて詳細情報を引き継ぐことができます。
できれば「クリップをレンダリングして置き換え」をしてからAAFを書き出すことをお勧めします。


6まとめ

いかがでしたでしょうか。

便利で画期的な「リミックス」機能ですが、MAへの引継ぎでは注意が必要なことがお判りいただけましたでしょうか。
映像編集からMAへのデータ引継ぎについては互いに見えない部分が多く、問題解決にも手間がかかります。ですが、よりよくMAをご利用いただくために弊社ではこのような情報発信を今後も行っていきたいと思っております。

過去記事もお役に立てれば幸いです。


Premiereはこれからまだまだ新機能が実装されていくと思います。ご不安や疑問点があれば是非MA時にご相談ください。
今後もお客様と共に問題解決をし、より快適なMA作業をご提供してまいります。



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