今回はOMF・AAFを書き出す際の注意点について解説していきます。
まずはおさらい。
そもそも『どうしてOMF・AAFじゃなきゃいけないの?』『OMF・AAFってなに?』
そういう方向けには「基本編」をご用意しておりますので、そちらをご覧ください。
OMF・AAFについて何となく思い出していただいたところで、今回の本題に入っていきたいと思います。
このページの内容はAdobe Premiereを基準としております。
各ソフトによりOMF・AAFへ書き出される情報に違いが生じる場合があります。
詳しくは各ソフトのチュートリアルをご覧ください。
1トラックの整理
音の編集・加工はトラックごとに行うのがセオリーです。
映像編集の考え方とは乖離するかもしれませんが、MAでは、クリップごとに加工をせず、基本的には音声をトラックごとにカテゴライズして編集・整音をしていきます。
ですから、1つのトラックの中にインタビューとSEが混ざっているようなことがあると、スムーズなMAの妨げになります。
「声(マイク種類別)」「環境音」「SE」「BGM」など、それぞれ種類別にトラックを作成し、音の種類ごとに配置して下さい。
スペースが空いているからと、1つのトラックに異なる種類の音を配置しないことが肝要です。
あまりに整理されていない場合はMA側での整理作業が必要になるため、余計なMA費用がかさむこととなります。
2モノラルトラック・ステレオトラック
OMFで生成されたトラックは、Pro Tools上ではすべてモノラルトラックとして扱われます。
*AAFでは現状、ステレオ/モノラルのトラック情報は引き継がれています。
MAでOMFを展開する際に、音源を確認しながら適宜ステレオ/モノラルトラックへと改めて配置を行っています。
映像編集時・書き出し時に注意する点はありませんが、MA引き渡し後に「上から3トラック目の音だけを使ってください」などの指示を出したとしても、編集上でのトラック数とMA側とでは必ずしも一致しないことを頭の隅に入れてコミュニケーションしましょう。
3使わない音について
ミュート
「このトラックは使わないからミュートしよう……」と、オーディオトラックの「M」ミュートを押していても、OMF・AAFへはオーディオトラックのミュート情報を引き継ぐことができません。「S」ソロも同じく引き継ぐことができません。
*詳しくは「OMF・AAFにおけるPremiere → Pro Tools検証 基礎編」「4:ミュート(4-2)」で触れています。
OMF・AAFにおけるPremiere → Pro Tools検証編「4:ミュート」
オーディオクリップの無効
編集時に「MAでは要らないかもしれないけれど、とりあえず目印として、クリップが存在していたことだけは残しておきたい」
そんなオーディオクリップは「有効」→「無効」化してください。
シーケンス上で「有効」を外したクリップは、OMF・AAFデータには含まれません。
トラックに仮置きした音
BGMの予備等で「もしかしたら使うかもしれない」とビデオクリップの範囲外にとりあえず置かれた音声……
これも書き出されてしまいます。
OMF・AAF書き出しは基本的にシーケンススタートからアクティブ(有効)なクリップのエンドまでです。
ですから、ビデオエンドまでを作業範囲だと思い、ビデオクリップ範囲外にオーディオクリップを置いていても、すべてが書き出されてしまいます。
BGM予備もトラックに整列されていれば、MA展開時に素材の意味は理解できますが、放置されているかの如く置かれたオーディオクリップについては、使用の有無さえわかりません。
トラックの整理と同じですが、MAで使用しないオーディオクリップは「無効」にする、もしくはデリートし、「整理整頓してトラックに並べる」ことが基本となります。
4オーディオクリップへのエフェクト
全て当てはまるわけではないかもしれませんが、Premiereのオーディオエフェクトでかけた効果はOMFやAAFには基本的に反映されません。
映像編集時にオーディオエフェクト処理を行って音声の調整作業が完結している場合は、OMFやAAFではなくwav等処理済みオーディオファイルを作成しMAへ持ち込んだほうが良いかもしれません。
もし、MA時に加工を必要とされる場合は、そのままOMFやAAFを持ち込むと、オリジナルからの加工が可能です。
5オーディオトランジション
「基本編」で触れていますが、OMF・AAFに含まれる情報として
- 音声クリップの編集点
- オーディオトランジション(ディゾルブ等)
があります。
オーディオエフェクトとは違い、オーディオトランジションはMA展開後も編集時のオーディオトラックそのままの情報が反映されます。
*詳しくは「OMF・AAFにおけるPremiere → Pro Tools検証」基礎編「5:クリップ編集点/オーディオトランジション」で触れています。
音声クリップの編集点についても、どこで切り貼りしたか、MAミキサーはすべて把握することができます。
予備フレームを含めて書き出しを行っていれば、MA時に音声データを引き出したりしながら編集点をより高精度に編集することが可能です。
インタビュー、BGM……色々な素材でうまく切り張りできなくてもMA作業で問題解決してもらいましょう。
6日本語のファイル名・クリップ名
OS環境、ソフトウェアの種類、バージョン等……いろいろな組合せパターンが考えられますが、日本語ファイル名・クリップ名は基本的には文字化けすると考えていいと思います。
OMF・AAFデータの文字化けによるエラーでリンクが切れてしまった場合は修復がより困難になります。
7シーケンススタートとビデオ配置場所
テレビ番組やCMでは映像のスタートタイムは1Hスタート(1時間0分00秒スタート)が慣例ですが、Web用動画、VP等では0分00秒スタートで作成されることも珍しくありません。
またその際、任意の長さの「のりしろ」を映像頭に付けて作成されることも少なくないのですが、スタートにのりしろを付けて映像配置したシーケンスからMA用ワーク動画を書き出す際は注意が必要です。
動画の頭からお尻までを選択し書き出してしまうと、のりしろ分だけ音がずれてしまいます。
それは、OMF・AAFの書き出しスタートタイム=シーケンススタートタイムだからです。
音は無条件にシーケンススタート(0分00秒)からになりますが、映像は動画のスタート(のりしろ含まず)からの書き出しをしてしまうと、スタートタイムで差分が生じ、MAスタジオで配置した際に音がずれてしまうというわけです。
OMF・AAFの情報だけでは動画が配置されたスタートタイムはわかりません。
もし、動画に「のりしろ」をつけてシーケンス上に並べて編集した場合は、
- のりしろを含めてMA用ワーク動画の書き出しをする
- シーケンススタートから何秒後(のりしろ分)に動画を配置したか
を、MAスタジオに伝えましょう。
8オーディオファイル設定は「埋め込み」が安全
OMF・AAF書き出し時の選択肢「埋め込み」と「個別」、どちらでもMA作業は行えます。
しかし、「個別」を選択するとOMF・AAF書き出し後にリンクが外れてしまう可能性があります。
OMFには2GBまでの容量制限がありますので、それを回避するという意味で「個別」にするメリットはありますが、動画尺が長くない場合(目安:16bitなら一般的なVPであれば約20分程度の動画(24bitならその半分程度))は「埋め込み」が無難です。
9OMF・AAF書き出しはソースデータを含めると重くなる
書き出しの際、ソースデータを含めて書き出す設定は避けたほうが良いかもしれません。
インタビュー等、素材データが膨大な場合はすぐに容量が重くなってしまいます。
また、OMFは2GB以上のデータになると埋め込みができなくなってしまいます。
BGM編集で不安がある際はソースを含めるという方法もありますが、容量が重くなりそうな場合は、OMF・AAFにはソースデータを含めず、個別で音源を持ち込まれたほうがいいかもしれません。
10予備フレーム
予備フレーム設定は、Premiereの場合、初期設定が1秒となっています。
では、何秒に設定するのが適切か……それはMAに求める作業次第かもしれません。
インタビューの言葉のつなぎが気になる等、音声の編集であれば3秒もあればいいかもしれません。
しかし、BGM編集となると、尺調整に使えるフレーズが曲の中にちりばめられている可能性があるので、予備フレームの秒数では対応できない場合があります。
先にも触れましたが、BGMの元素材があれば、MA時に精度の高いBGM編集を期待できます。
OMF・AAFとは別に、WAV等圧縮されていない元素材もMA時に持参されるとよいかもしれません。
BGM編集に不安を感じた際は是非MAスタジオに相談してみてください。
11その他
OMF・AAF書き出し時のフレームレートとMA用ワーク動画のフレームレート
OMF・AAF書き出しの際はシーケンスで設定されたフレームレートで自動的に書き出され、設定を変えることはできません。
一方、MA用ワーク動画は書き出し時にフレームレートの設定を変更可能です。
書き出す際にフレームレート設定をシーケンスと一致させておかなければ、MA後編集ソフトに音声を戻した際にずれてしまう危険性があります。
MA用ワーク動画を書き出す際はご注意を!
いかがでしたでしょうか。
作業環境により、OMF・AAFデータの見え方が変わってしまうことをお伝えしました。
上記は一例ですので、詳しくはOMF・AAFを持ち込まれるMAスタジオに確認されると良いかと思います。
お互いの環境の違いを少しでも埋め、スムーズな作業を図る第一歩としてお役に立てましたら幸いです。